N国党全面敗訴判決

令和6年11月27日に、NHKから国民を守る党(以下「N国党」といいます。)が、選挙ウオッチャーちだい氏(以下「ちだい氏」といいます。)を名誉毀損で訴えた民事訴訟で、東京地方裁判所が請求棄却の判決を下しました。N国党の全面敗訴です。N国党の代表者は、立花孝志氏です。

この事件では、ちだい氏が、N国党について、「反社会的カルト集団」「サリンをまかないオウムみたいなもん。」などと述べた記事や配信動画が名誉毀損として不法行為になるかが、主な争点になりました(判決文は、ちだい氏がアップされています([【選挙ウォッチャー】

NHKから国民を守る党・動向チェック(#541)。|チダイズム](https://note.com/chidaism/n/n1e74fc286185))。

立花孝志氏が関わった過去の犯罪行為や不法行為を認定

東京地方裁判所は、判決理由の中で、以下のように、N国党代表者立花孝志氏のこれまでの犯罪行為や不法行為を具体的に指摘しています(別紙引用箇所は省略)。

「原告代表者やその支持者らは、本件政治団体が設立された頃、日本放送協会職員又はその嘱託職員に対して暴行を加えるなどし、原告代表者は、その後、日本放送協会の業務を妨害したことなどにより有罪判決を受け、本件政党に所属していた本件職員が脅迫の罪で有罪判決を受け、原告代表者は脅迫に当たるとされた本件職員の発言等に同調する発言をし、原告代表者の指示を受けた本件副党首らが日本放送協会職員の容姿を撮影したことにつき、原告代表者及び本件副党首は不法行為を認める判決の言渡しを受け、原告代表者は、本件政治団体の市議会議員が被告に対して提起し、不当訴訟に当たるとの判決が言い渡された訴訟の提起等に関与していたものである。このように、原告代表者及びその支持者らについては、平成25年以降現在に至るまで、複数回にわたって犯罪行為又は不法行為と評価される行為をしていた事実が認められる。」

「さらに、原告代表者は、上記のとおり、被害者のある犯罪行為や不法行為を繰り返してきたのみならず、本件副党首とともに支持者に対して自らに批判的な言動活動を行う被告又は第三者への迷惑行為を促し、テロや民族虐殺をも辞さないかのような発言すら行っていた事実が認められる。」

「原告代表者はその関係者、支持者らにおいて、上記政治活動の家庭において犯罪行為や不法行為を繰り返し、かつ、原告代表者において、法律を遵守しない意思を明確に表明して、テロや民族虐殺をする可能性すら口にしていたとの事実を前提にしていたものと認められ、かつ、前記1に認定のとおり、同事実は、その主要事実につき真実であると認められるものである。」

「そして、本件各表現行為は、上記アに掲げたとおり、原告代表者はその関係者や支持者において犯罪行為や不法行為を次々と行い、原告代表者が法律を遵守しない意思を明確にしていたことなどを踏まえて、原告について、これを違法行な行為を平然と繰り返す盲目的な集団又は団体と評価して「反社会的カルト集団」と表現し、また、犯罪行為等を平然かつ盲目的に繰り返す集団又は団体として「オウムと一緒」「オウムみたいなもん」と表現したのであって、このような表現行為について、原告代表者等による上記行為等に対する意見及び論評としての論旨から逸脱し、主題を離れて人心攻撃のように原告を攻撃するような表現であったとまでいえない。」と判示して、N国党の請求を棄却しました。

裁判所の判断の特徴と背景

名誉毀損の判断枠組みとしては、従来の判例を変更するものではないのですが、立花孝志氏がこれまで関わった犯罪行為や不法行為を理由に組み込んでいる点が特徴です。判決文の別表で18項目にわたって、具体的に列挙されています。違法行為の数の多さと立花孝志氏の遵法意識の欠如には、改めて驚かされます。

本件では、「反社会的カルト集団」「サリンをまかないオウムみたいなもん」という表現が問題となりましたが、裁判所は、これらの表現が名誉毀損にあたらないと判断しました。その理由として、実際にN国党代表者及びその支持者らが犯罪行為や不法行為を断続的に行っており、立花孝志氏自身が法律を遵守しない意思を明確に表明している事実があることを挙げています。

ちだい氏は長期にわたりN国党の活動を追跡しており、今回の訴訟においても具体的な証拠を提示したことが、このような判断につながったと考えられます。

名誉毀損と表現の自由の境界

名誉毀損に関する事件は近年増加傾向にあり、訴訟提起のハードルが下がっていると言えます。しかし、名誉毀損が成立するかどうかは、表現の内容そのものだけでなく、その表現の基礎となっている事実関係が最も重要です。

今回の事件でも、「カルト集団」という強い表現が用いられていますが、その表現の背景にある具体的な事実関係、特に過去の裁判で既に結論が出されている犯罪行為や不法行為が多数存在したことが、裁判所の判断に大きく影響しています。

政党という公的な存在に対する批判は、基本的に公益性が認められやすい傾向にありますが、それでも表現の自由には一定の限界があります。批判的な言論が具体的な事実に基づき、合理的な推論によるものであれば名誉毀損とは認められにくいのです。

行き過ぎた選挙活動への歯止めが必要

立花孝志氏は、先日の兵庫県知事選において、百条委員会の委員会長を務めた奥谷議員の県議の自宅兼事務所の前で街頭演説を行い、「引きこもってないで家から出てこい」「これ以上脅して奥谷が自死しても困るので、これくらいにしておく」などと発言したと報道されています。

上記の報道が事実であるとすると、立花孝志氏が関わった過去の犯罪行為や不法行為のことを踏まえると、奥谷県議やご家族が抱かされた恐怖心は著しく、悪質な脅迫行為に当たると言わざるを得ないのではないでしょうか。

選挙活動の名の下で行われる行き過ぎた言論については、司法は、歯止めを掛けなければなりません。問題は、選挙活動という正当な政治行為の傘の下で実質的に違法行為が行われる場合に、どこで線引きをするかということです。裁判所は、そのような行為についても適切に違法性を認定していく必要があります。