遺産分割手続で相続財産に不動産が含まれている場合、不動産を分割する方法としては、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割の4つの方法があります。家庭裁判所は、この4つの方法のうち、まずは①現物分割が可能かを検討し、①現物分割が困難であれば②代償分割、②代償分割が困難であれば③換価分割、③換価分割も困難であれば④共有分割を検討することになります。
ただ、実際に多くの遺産分割協議を見ていると、複数の不動産が価値や条件に大きな違いがなく、各相続人が別々の不動産の取得を希望すれば現物分割でいけるのですが、それがきれいにできるケースはあまり多くありません。実際に私の経験では、遺産分割の約半数は代償分割で決着することが多いのです。代償分割とは、ある相続人が不動産を取得し、その代わりに他の相続人に金銭を支払うという方法です。
現物分割の難しさ
隣接する4筆の土地を合筆して、2筆に分筆する現物分割は、やったことがあります。しかし、整形地で一見、分筆が可能そうでも、面積を基準にして平等に分筆すると、建物の一部が越境してしまうことが分かったりして、解決までに数年を要し、けっこう長引くことがありました。
このような遺産分割の実務においては、弁護士の力が不可欠であることが多いのですが、実は遺産分割の多くは弁護士が関与せず進められていることも事実です。特に遺産総額が数千万円という相続される額としては「多すぎず少なすぎず」金額のケースでは、相続人たちは弁護士費用をあまりかけようとしない傾向にあります。
しかし、これが後々の紛争につながることもあるのです。「数千万円の資産を守るのに弁護士費用をかけない」という判断が、長期的には損失につながりかねないのです。
現物分割協議の長期化のリスク
1年ほどかけて現物分割の協議をしていたところ、相続人の1人が、認知症になったというケースもあります。昨今は、被相続人が90歳代などかなり高齢で亡くなることが珍しくなく、相続開始時に相続人はほとんど70歳過ぎの方で、遺産分割調停が数年に及び、相続人が認知症になって成年後見人を選任しなければならなくなったり、二次相続になるケースがあります(相続人が亡くなってさらに遺産分割が必要になる)。
遺産分割調停が長引きそうな事案を受任する場合には、長期化することによって生じるリスクは、弁護士として必ず説明するようにしています。
共有分割のリスク
特に注意すべきは「共有分割」という方法です。調停の際には、短期的な解決を図るため「しばらく共有でいいじゃない」と安易に共有分割が勧められる場合もあります。
ですが、これは後々大きな問題を生みます。一度共有分割で調停を成立させてしまうと、二度と遺産分割調停はできず、共有不動産を分割するには「共有物分割訴訟」しか方法がなくなります。しかし、この訴訟では細かい条件を決められないことが多く、紛争が長期化する傾向があります。
相隣関係のリスク
あと、不動産の現物分割で気を付けなければならないのは、分割後の近接した土地に、相続人がそれぞれ居住するケースです。弁護士や調停委員は、分割さえ終わってしまえば事件終了です。しかし、相続人同士の感情的な対立は、多くの場合、残ります。そうすると、安易に現物分割をしてしまうと、後々、深刻な相隣関係の事件に発展することもあります。
実際に起こりがちなのは、ある相続人が不動産に固執するケースです。特に生活圏を守ることに熱心になる方の場合、金銭よりも不動産を重視する傾向があります。これは経済的なロジックではなく、感情的な側面によるものでしょう。
弁護士として心がけること
遺産分割に限らず、家事事件に関わる弁護士としては、調停を成立させて終わりというのではなく、親族間の紛争を再燃させないよう、調停成立後の感情の沈静化や当事者間の調整方法には、できるだけ配慮しておきたいところです。
このような複雑な相続問題では、専門家のサポートが重要です。相続財産が大きくなくても、後になって揉めることを防ぐために、弁護士への相談を検討することをお勧めします。表面的な解決ではなく、将来にわたって真の解決を図るためには、専門家の知識と経験が役立つはずです。
